トランプ大統領のガザ住民を他国に移住させるという発言に、世界中から非難の嵐が吹き荒れている。
トランプ政権内からも、トランプ支持者からも非難されている。
ただ、実際のところ、トランプ支持者だけではなくトランプに批判的な民主党支持者や既存メディアですら、トランプの真意がどこにあるのか計りかねているようにも感じられる。
私も、トランプが単純にイスラエル擁護の立場だけでこのような発言をしたとは考えていない。
ただ、数日が経ち様々な見識が出てきており、少しずつ真意が見えてきたように感じる。
大前提として、パレスチナとイスラエルの2国共存は終わらせるべきであり、これ以上、紛争の種を残してはいけないという、大きな意味での正義だろう。
たとえ、今回、両国が終戦をしても、また数年後には同じように戦闘が勃発することは目に見えている。50年以上も同じことを繰り返してきていたからだ。
この2国だけであれば、共存はできるだろう。実際に昔は共存していた時代もあったからだ。
しかし、このグローバル化した時代の中で、周辺諸国や欧米、そして今では中国までもが関与している時代の中で、共存していくことは無理だ、との判断をしたのだろう。
次に、ハマスをこのまま放置し続けると、テロ組織化し、欧米の脅威になりかねないとの考えもあるのだろうと思う。
ハマスに関しては、中東専門家でも意見が二分されており、テロ組織のように言う人もいれば、逆にパレスチナの人たちに教育と施し、インフラを整え支持を得ている「政党」だと言う人もいる。
現時点では、後者のように感じられるのだが、しかし、中東のテロ組織が出来上がる構図というのは、このような後者の形から入っていき、テロ組織が生まれてきたのも事実だ。
そして、そこに近隣諸国や米国が絡み、テロ組織を作らせているのも実態だろう。
今回のイスラエル・ハマス戦争が第三次世界大戦の引き金になるのではないかとの懸念が出るほど、この地域は中東問題の核となっており、これを完全に消滅させる良い機会だと、トランプが考えているように感じる。
そこには、パレスチナの人たちが土地を追われるという、悲しい側面はあるが、今後、パレスチナの人たちがテロ組織の要員にならず、平和に暮らしていくことがベストだとも考えているように感じる。
現状のままだと、パレスチナ人がパレスチナの地に残り、将来にわたって虐殺され続けるのか。
近隣諸国がパレスチナを支援して、イスラエル人を虐殺するのか。
その選択肢が国際社会には突きつけられることになる。
これに関連して、サウジアラビアなど周辺のアラブ諸国への警告のという側面もあるのではないかと思う。
この戦争に対して、事実上、傍観していたのが周辺諸国である。
もちろん、イランは大きな戦争を引き起こさないために、実質的な攻撃をイスラエルには行わなかった側面はあるが、万が一イランがイスラエルに攻撃をしていたら、今頃、欧米諸国によってイランという国は崩壊していた可能性もあるだろう。
今、アラブ諸国は経済的に多いに発展し、世界に大きな影響を及ぼすようになってきているのが実態である。ブリックスとも近く、欧米とは一線を画す方向へと舵を切っている。
これはバイデン政権の大きな失態ではあったが、しかし、中東の国は決してひとつにまとまっているわけではなく、今回のイスラエル・パレスチナ戦争に対して、傍観しているということは、何か行動を起こせば、中東が混乱することを、中東諸国自体がよくわかっている。
要するに、中東諸国の岩盤が脆いということを示してしまった。
それに対して、トランプは一気にアメリカの影響力を見せつけるために今回の発言になったのではないか。
トランプ(米国)的に見れば、過去、何度も中東諸国はイスラエルを受け入れるパフォーマンスをしておきながら、この戦争に対して、仲介することもなく傍観していたことに、かなりの痺れを切らしているのではないかとも思う。特にサウジに対してだ。
アメリカの同盟国であるサウジアラビアが、バイデン政権に対して、そっぽを向く態度を取ってきたのは事実だが、今後はちゃんと方針転換しろという、サウジに対してのメッセージでもあるように感じられる。
バイデン政権がサウジアラビアに取ってきた態度を見れば、サウジの態度は大いに理解できるが、アメリカの政権のトップが誰であれ、アメリカからの多大な援助の元で、今のサウジが中東で力を持っている側面もあり、サウジがアメリカに取ってきた態度は反省すべき面もあるのではないかと感じる。
現時点で、トランプのパレスチナ対策はなんとも言い難いのだが、表面的なマスコミ報道だけでは分からない、大きな意味があるのだろうと、しばらく様子を見た方が良いだろう。