年末のこの時期になると、話題になるのが、政府からの沖縄関係予算だ。
毎年、秋頃から、知事は東京に行き、お伺いを立て、少しでも多くの予算を確保してもらうために翻弄される。
もちろん、これは沖縄だけの話しではなく、多くの知事も東京参りをして予算の確保に必死である。
次年度(2023年度)の予算も確定した。
総額は2679億円。
内、沖縄県が自由に使える、一括交付金は、今年度から3億円減の759億円
また、政府から市町村に直接降りる推進費は、5億円増の85億円。
23日に閣議決定される見通しだ。
ところで、この沖縄関連の予算だが、いまだに沖縄は基地があることで、多額の金が降りていると思っている方がまだいるもの事実だ。
仲井眞知事時代に辺野古埋め立ての承認と引き換えに、8年間3000億円を確保したことから、特に強く言われるようになったように感じる。
しかし、実際には沖縄が飛び抜けて多いわけではなく、全国で5番目前後だ。
他県と比べても、さほどの大差もないのが実態である。
さらに、人口一人当たりで見た場合、再開位レベルである。
ただ、その時の知事や県政の基地問題への方向性によって、金額に差があるのが実態だ。
沖縄関係予算と基地問題を関連付ける「リンク論」という言葉がある。
沖縄の本土復帰後、政府は、予算と基地とは関係ないとのスタンスをとってきたが、安倍政権下の2016年頃から、「リンク論」が公然になっているのが実態である。
下のグラフが、沖縄関係予算だ。
仲井眞知事が辺野古埋立承認と引き換えに、8年間、3000億円の確保を政府と約束したことで、翁長県政、玉城県政でも3000億円は確保したが、その後は、減少している。
ただ、沖縄県がある程度自由に使え、紐付けのない、いわゆる「一括交付金」に関しては、翁長県政となってから減少している。
(2012年以降の赤いグラフ)
これに対して、辺野古反対の知事に対する当てつけだとの論調もあるが、翁長知事時代、この一括交付金を使いきれず、翌年から減額されている側面もあることを理解しておく必要がある。
(そこには、東海岸に建設予定のMICE計画など、政治的に複雑な側面もあるのだが)
また、今年2022年は沖縄県は選挙イヤーだったが、この選挙で自民党推薦の市町村長が多く誕生し、主要は市町村でオール沖縄の候補はことごとく破れた。
この状況で、政府から市町村に直接交付する予算は要求の75億円を上回る85億円となっている。
この沖縄関係予算だが、
沖縄だけがなぜ目立っているのか。
基地問題とリンクしていることで、全国ニュースでも取り上げられることも大きな要因であるが、根本的な仕組みが他県と異なっていることも大きいために、誤った認識をされる場合がある。
簡単に説明すると、
通常、政府から降りる予算は「国庫支出金」と言われるが、沖縄だけが「沖縄振興予算」と名づけられており、まるで、沖縄だけが国庫支出金とは別に振興予算を得ているかのように思われるからだ。
ただ、「沖縄振興予算」には他の都道府県とは違って、沖縄県が自由に使える、「一括交付金」というものが含まれています。とは言え、全体の金額は他の地自体と大きな差はない。
さらに、通常、各都道府県は、各省庁に予算の要求をして、それを取りまとめて、政府から降りるのだが、沖縄は内閣府が一括で計上し、各省庁に移し替え、それを、沖縄総合事務局の直轄事業などに下ろす仕組みになっている。
いわゆる、政府の匙加減で金額が左右される側面があるのだ。
こう言った呼び名や仕組みの違いに加え、基地問題と絡むことで、誤解が生じている面があります。
なのだが・・・・・
基地があることで、多くの予算が沖縄に降りているというのは誤解だ!
と、果たして言えるのか。
沖縄県としての年間の予算は他の都道府県と大差はないものの、防衛省にお願いすれば落ちてくる金があるのは事実だ。
那覇市の奥武山公園にある、沖縄セルラースタジアム。毎年、読売ジャイアンツのキャンプの球場として、2月頃にはスポーツニュースにも出てくるが、このスタジアムの建設費68億円のうち、3/4は防衛省からの補助で建設されている。47億円以上となる。
防衛省が補助を出した根拠は、スタジアム建設予定だった奥武山公園の向かいに、米軍の那覇軍港があるから「基地周辺対策事業」該当するとして補助金対象となっているのだ。
しかし、果たして基地負担なのか。奥武山公園公園で多くのイベントが開催される際、この那覇軍港が駐車場として利用されていることもある。
さらに、この補助金を取り付けて球場を作ったのは、翁長前知事が那覇市長時代のことだ。当時は自民党の市長であったが、その後、オスプレーや辺野古反対の立場となり、県知事選に出馬する際に、ここで決起大会を開いたり、辺野古反対の県民大会が行われ、一部の保守派からは批判が出ていた。
また、翁長那覇市長時代に、同じく奥武山公園公園にJリーグのサッカースタジアムの建設も発表された。これも防衛費や沖縄県一括交付金をあてこんでのことだったが、セルラースタジアムのこともあり、防衛費や国費を使うことに政府が難色を示している。現在も計画はあるものの事実上止まっている。
しかし、今後、保守系の沖縄県知事と那覇市長が揃った場合、一気に進む可能性もある。
ちなみに、このセルラースタジアムとサッカー場の予算のことを沖縄県内のメディアが大きく封じたことはない。
また、つい最近のことだが、先月、自民党の推薦を受けて那覇市長に当選した、知念覚那覇市長。
沖縄を訪れていた、松野官房長官と早々に面会した。その際、那覇軍港の移設にからめて、現在建て替え工事が始まっている、那覇市立病院の費用の一部を政府にお願いしており、政府から一定の支援が出るものと考えられる。
これも、那覇軍港の浦添移設をスムーズに行うために、政府側が那覇市に一定の配慮をしたものである。
今、バスケットボールのBリーグでトップを走っている、琉球ゴールデンキングスの本拠地で、最新の設備を整え、B’zからドリカムまでライブにやってくる、「沖縄アリーナ」だが、ここも建設費の9割にあたる23億円が主に防衛省から出ている。
これらは、一部であるが、沖縄県の振興予算とは別に、市長村レベルで防衛省にお願いして、防衛省から直接降りている予算も多いのが実態だ。
自衛隊や米軍のある市町村には、こういった最新の施設が建設されていたり、しかも、到底、自衛隊や米軍に関係していない、レジャー施設などに金が落ちているのが実情であり、基地があることで財政面で優遇されているとうの側面があるのは事実である。
また、基地があることで、防音に対応した窓の設置や、クーラーの設置、それに伴う工事、米軍施設内での様々な工事など、振興予算とは別に、防衛省から直接、企業へと落ちているものあり、それを見越して成り立っている企業があることも実態である。
さらに、沖縄振興の目的で、高速道路代が本土より割安になっていたり、NHKの受信料が低かったり、酒税も低い(これは今後本土と同レベルになる)、また、飛行機の航空燃料税は沖縄の空港を利用する場合、1klあたりの金額が半額となっている。
それに加え、沖縄にはDFSが設置されていたり、金融や情報産業などを中心に経済特区も他府県とくらべ多い。
年末に話題になる、振興予算だけを見れば、「沖縄は優遇されているわけではない」と言えるが、全体を見た場合、やはり優遇されているのではないかと思われる面もあるのが実態であり、様々な側面をトータル的に見ることも必要だ。
また、優遇措置を長く行うことで、逆に沖縄の自立的な振興を遅らせている面があるとの指摘もある。
関連サイト
沖縄基地問題|もうそろそろ補助金漬けで優遇されているわけではないことを知るべき
https://imnstir.blogspot.com/2019/09/blog-post_4.html
【検証】沖縄と補助金の50年史(週間プレイボーイ)
https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2022/06/09/116511/
沖縄予算と米軍基地の「リンク論」は全国の納税者を愚弄するものだ
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/56435
翁長氏の不作為…防衛費で反基地闘争の聖地建設
https://www.sankei.com/article/20160106-L3U67OAK3FIOPNZQFIEK2QYWSA/
那覇市立病院の建て替え費用どう工面? 国は交付金確保に意欲 知念市長、官房長官と面会
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1067833
アリーナ建設に防衛省が23億円/沖縄市へ9割補助
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/290851