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県民投票
普天間基地の移設先の辺野古の埋立の賛否を問う、県民投票が2019年2月24日に実施された。
正式名称「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」
結果、反対票が7割を超えた結果となった。
有権者ベースで見た場合はたったの3割
この県民投票結果でもって、玉城デニー知事を筆頭に、辺野古埋立反対派は、民意が示されているのに、工事を続行している政府を批判する大きな材料として利用している。
しかし、政府はこの結果を受け、埋立工事をさらに加速させたのではないかと思う。
それは、投票率が50%程度で、県知事選挙よりも低く、実質、辺野古反対の意思を明確に打ち出している沖縄県民は、37%と、約3割であったからだ。
有権者数から見た結果
県民投票を行うにあたり、沖縄県は、県民投票に向け、テレビ、ラジオ、ネット広告、地元ニュース番組などあらゆる手段で、広報活動を行なっており、県民投票の周知はほぼ100%だった。
沖縄県は、県民投票の周知のための広報予算として、1億3000万円を投じ、7割を超える投票率を目指していた。
(ちなみに、県民投票全体の予算は5億5000万円)
しかし、結果は7割どころか、5割をかろうじて超えた52.4%であった。
これだけ周知がされていたにも関わらず、沖縄県民の約半数が、投票を破棄。
有権者数をベースにして見れば、2018年の県知事選挙で、辺野古反対で当選した玉城デニー知事の得票率は34.59%、
県民投票で辺野古反対の得票率も37.64%。
2018年知事選
有権者ベースで見た場合、沖縄の知事選や国政選挙の多く、市町村選挙でも基地問題が争点となっている場合、似たような構図となっている。
革新系:保守系:破棄票
3割:3割:3割
この3割の若干の増減によって、保守と革新の知事が入れ替わっているのが長年の沖縄の選挙結果である。
ちなみに、翁長雄志氏が『オール沖縄』というスローガンで、全国的に注目された県知事選挙であっても、同じ構図である。
県知事選挙では、基地問題だけが争点ではなく、様々な沖縄県の問題が争点となっており、辺野古一点に絞った民意を示す必要があると実施されたのが県民投票であった。
しかし、結果は通常の選挙と同じ結果となった。さらに、投票率は県知事選挙よりも低く県民の辺野古への関心の薄さが出てしまった結果となっている。
県民投票に法的拘束力がなくとも、投票率が8割を超え、その7割が辺野古反対との民意が示されれば、さすがに政府も何らかの対応が必要だったと思うが、結果として沖縄の世論が大きく変化していないことを確認できたこととなり、政府は辺野古の工事を進める大きな要因となったのではないかと思われる。
歪んだ県民投票
県民投票だが、翁長知事時代から県民投票実施の声は上がっていた。
しかし、翁長知事時代には実施されることはなかった。
それは、翁長知事ご自身がこのような結果になることを分かっていたからだろうと推測する。
翁長知事は元々は自民党県連のトップを務め、自民党のことは熟知しているはずであり、自民党のしたたかさも理解していた可能性もある。
「県民の3割しか反対していない」という武器を政府に持たせることを恐れていた可能性もあるだろう。
翁長知事の死去によって、玉城デニー知事となり、早々に県民投票を実施へと踏み切った。
これが、玉城デニー知事の大きな失策だっただろう。
県民投票実施を求めたのは、オール沖縄であり、当初から反対ありきで実施された経緯がある。
そのため、実施をするにも、保守側から選択肢を「賛成・反対」の2つではなく、多数の選択肢を入れるべきとの意見があったり、そもそも県民投票に否定的な市長などもあり、一部の市町村では実施されない可能性なども出ていた。最終的に「どちらでもない」という選択肢を追加し、県が市町村を説得し実施された経緯があった。
また、オール沖縄側から要望で実施されたこともあり、選挙運動の大半は反対派のみであった。
通常の県知事選挙などと同じように、日本共産党の街宣車が本土からやってきて、県内各地で反対に投じるよう激しい街宣が行われていた。
さらに、歪んでいたのは、保守側の団体企業などが事実上、ボイコットしていたことだ。
保守政党を支持する企業や組織の団体では、投票しないよう指示が出ていたのも事実のようだ。
県民投票の結果に、保守側の多くの組織票は含まれていない。
当時、「オール沖縄」の盛り上がりが根強かった時期であり、組織票を入れても、反対が多数になる予想があっただろう。
また、辺野古や沖縄の基地問題には様々な感情が思いがある人がおり、「賛成」「反対」「どちらでもない」という選択肢では県民の意思を表せないとの意見も多く、ボイコットへと向かった可能性もあるのではないかと思う。
県民投票が行われてから三年近くの月日が経ち、未だに県民投票結果を持って、「県民の意思が示されているにも関わらず・・・」と、反対派が利用しているが、決して完全な県民の意思が反映されいないのが実態だろう。
県民の意思を調べるのであれば、5億円の金を使って、大々的な県民意識調査を行なった方が正しい結果が出るのではないかと思われる。
沖縄の基地問題は、過去の歴史や教育、マスコミ報道、本土の政治団体の活動など、様々な要因があり、簡単に白黒つけられるようなものではない。
ただ、この県民投票のように、反対派だけが推し進め、強引に行なった場合、必ず歪みが生じる。そしてその歪みが、また基地問題を複雑化させていく。
最後に
沖縄に多くの米軍基地があるのは事実であり問題もある。
しかしこの実態をさらに複雑にしているのは、政府側だけにあるのではない。
通常の選挙であれば、投票率が低かろうと一票でも多く獲得すれば当選であり、基地や辺野古反対派の知事が当選すれば、反対へと動くことは当然である。
しかし、選挙の結果としては常に3割の県民が基地を容認しているのが実態である中、「県民の総意」だとか「ウチナーンチュのアイデンティティー」という言葉で反対するには無理があり、3割の県民の民意を切り捨てている側面もある。
また、翁長知事誕生から、すでにある辺野古のキャンプシュワブに作る滑走路建設を「新基地建設」と、あたかも新たな基地を作るような表現を使ったりしている。正確には「新機能」だ。
過去の戦争の経験から、基地に対して様々な感情を持っている人は多い。
その人たちの声はとても重要である。
しかし、それを左派政党が、反自民、反政府運動として利用している動きがあるのも実態だと感じている。
本当に沖縄県民のことを考え、実直に沖縄県民に向き合う政治家が現れない限り、沖縄の基地問題は今後もさらに複雑化していくばかりだろうと思う。
ただ、米軍や自衛隊などは国防に関わることであり、その舵取りは政府が主導権を握って行うことが基本であり、沖縄県の意思だけで、日本国全体の国防を大きく左右させてはならないことも、国のあり方として基本的なことだろうと思う。