琉球新報が連日、沖縄県知事選挙をめぐるSNSやネット上の情報についてファクトチェック記事を掲載している。新聞社によるファクトチェックというだけあって、確かに厳密に見れば指摘自体は正しい。しかし、県内大手紙がわざわざ検証するほどの内容なのか、という疑問が残る。
12日付の紙面でも、ネット上の「辺野古埋め立て工事に関する裁判は全て終わっている」という言説に対し、実際には民間人や市民団体が訴訟を起こしており、これは事実誤認だと報じていた。しかし、この言説が語られる文脈は、沖縄県と政府間の訴訟において県側に法的な打つ手がもう残っていない、という点にある。その上で「今後どうやって辺野古の埋め立てを阻止するのか」という趣旨で語られているのであり、発信する側も受け取る側も、民間人による別の訴訟のことは念頭に置いていない。
また、「辺野古区の住民に辺野古反対する人はいない」という発言に対しても、「辺野古にも反対し訴訟を起こしている住民がいる」という形でファクトチェックがなされている。これも事実としては正しいが、紙面自体が触れているように、辺野古区は条件付きで受け入れを表明しており、地区としての総意は容認の立場にある。加えて、辺野古区とキャンプシュワブの間には歴史的に良好な関係もあり、かつては地区の運動会にキャンプシュワブの兵士が多数参加していたこともある。米兵を相手に商売を営んできた住民や店も少なくない。こうした経緯や関係性を知る者からすれば、「辺野古区の住民に反対派はいない」という発言は、決して荒唐無稽な「嘘情報」とは映らない。
このように、影響力の乏しいSNS上の発言を細かく取り上げてファクトチェックを行うということは、裏を返せば、それ以外の――特に新報と親和性が高いとされる玉城デニー氏に対するネガティブな情報――については、事実として認めていることにもなっている。
さらに、ファクトチェックという行為自体が、結果として辺野古をめぐる歴史的経緯をSNS上で再拡散させ、事実を広める形になっている。沖縄県が裁判で敗訴を重ね、法的な打つ手を失っていること。辺野古区とキャンプシュワブの関係が実際には良好であること。基地問題を長年見てきた沖縄県民にとっては当たり前の事実や歴史であっても、本土の人々や県内の若い世代には十分に知られていない真実が、こうして広く伝わっていくことになる。
辺野古反対の立場から、都合の悪い事実を報じてこなかった琉球新報や沖縄タイムス。ファクトチェックという行為によって、かえって自らの立場を苦しくしているのではないだろうか。
