2026年8月、沖縄で注目を集めている映画「尖閣1945」。
太平洋戦争末期の1945年、石垣島から台湾へ疎開しようとした人々が米軍機の攻撃を受け、尖閣諸島の魚釣島に漂着した「尖閣列島戦時遭難事件」を題材にした映画。
石垣市が製作主体となり、五十嵐匠監督がメガホンを取った作品。
原作は門田隆将氏のノンフィクション「尖閣1945」。
私もまだ原作しか読んでおらず、楽しみにしている映画です。
原作とオフィシャルサイトや報道等の情報をまとめてみました。もし、興味のある方は、お近くで上映が決まった際にはご覧ください。
1945年、尖閣諸島で何が起きたのか
物語の舞台は、太平洋戦争末期の1945年7月。
石垣島から台湾へ疎開するため、2隻の船が出発しました。しかし海上で米軍機の攻撃を受け、1隻が沈没。もう1隻もエンジンを損傷し、漂流した末に、真水のある魚釣島へたどり着くが、島には十分な食料がない環境。
避難した人々は飢えや病気に苦しみ、次々と命を落としていきます。
その後、8月12日に「決死隊」が小舟で石垣島へ向けて出発。この行動が、その後の救助につながったとされています。
しかし、銃撃や飢餓などによって、多くの人が亡くなりました。
映画は、この極限状態の中で生きようとした人々の姿を描いているようで、公式サイトでも「極限の中で懸命に生き、命をつないだ人々の記憶」が作品の中心にあると説明されています。
主なキャスト
主演は富田健太郎さん。遭難船の機関長・金城嘉吉を演じます。
5人の子どもとともに魚釣島へ漂着する花城ヨシ役には羽田美智子さん。
そのほか、西岡德馬さん、遠山景織子さん、具志堅用高さん、大地康雄さん、榎木孝明さんらが出演しています。
監督は「島守の塔」などを手掛けた五十嵐匠監督。
全編石垣島ロケで撮影され、石垣島の自然や海も映画の重要な舞台となっています。
石垣島で特別試写会を開催
映画は2026年8月29日、30日に石垣市民会館で特別試写会が開催。
8月30日付の琉球新報によると、29日の試写会には五十嵐監督が登壇し、映画について「人間が生きようとする意思」を描いた作品だと説明。
会場には映画で使用されたサバニや衣装なども展示され、実際の事件を身近に感じられる試写会となりました。
そして、この試写会には事件の遺族も鑑賞しています。
70代の遺族女性からは、実際に事件について描いた映像について「自分が思っていた映像よりはソフトに感じた」という趣旨の感想が出た一方、亡くなった親族が残していた事件の記録をめぐり、「現実はそんなに甘くなかった」という思いも語ったと報道されています。(8月30日付琉球新報紙面)
この点は、この映画を考えるうえで非常に興味深く感じた。
映画として描かれる「物語」と、実際に事件を体験した人々や遺族が記憶している「現実」との間には、どうしても違いがあるようです。
「政治的な映画では?」という賛否も
「尖閣1945」をめぐっては、映画そのものだけでなく、製作の背景についても賛否がある。
現在の尖閣諸島は、日本と中国の間で大きな政治問題となっている場所。
そのため、「尖閣」という名前をタイトルにした映画が、石垣市を製作主体として作られることや、保守言論の門田隆将氏が原作であることから、政治的なメッセージを懸念する声やがあったもの事実だ。
実際、8月6日付の琉球新報は、事件の遺族から「領土問題の火だねにしないでほしい」という趣旨の懸念が出ていることを報じています。日中関係への影響を心配する声も紹介されている。
一方、今回の試写会を実際に観た人からは、政治的な主張を前面に出した作品というより、戦争の中で生きようとした人々を描いた人間ドラマとして受け止める声も出ている。
五十嵐監督自身も、映画の狙いについて「いろんな状況になっても、人間が生きようとする意志を描きたかった」と説明。
これだけは、観た人がどのように感じ、受け止めるのかということだろう。
「尖閣問題」だけではなく「戦争の記憶」として
「尖閣1945」というタイトルを見ると、どうしても現在の尖閣諸島をめぐる政治問題を連想する。
もちろん、その製作背景や政治的な側面を考えることも大切だろう。
しかし、この映画が題材にしているのは、1945年に実際に起きた戦時遭難事件。
原作からも、この内容は、女性や子どもを含む一般の人々が戦争に巻き込まれ、無人島で飢えや病気と闘いながら、生き残ろうとした。
そこには、領土問題とは別の、戦争によって普通の人々の人生がどのように変わったのかという問題があり、政治的に批判するのは少し違和感を感じている。(ご遺族の意見は尊重している)
この映画については「政治的か、政治的ではないか」ではなく、実際の事件について知るきっかけとして観てみるべき映画なのではないかと思う。
まとめ
「尖閣1945」は、太平洋戦争末期に石垣島から台湾へ疎開しようとした人々が米軍機の攻撃を受け、尖閣諸島の魚釣島に漂着した「尖閣列島戦時遭難事件」を映画化した作品。
主演は富田健太郎さん、羽田美智子さん。西岡德馬さん、遠山景織子さん、具志堅用高さん、大地康雄さん、榎木孝明さんらも出演しています。
石垣市が製作主体となっていることや、尖閣諸島を題材としていることから、政治的な意味合いをめぐって賛否がある作品でもある。
一方、8月29、30日に石垣市で行われた特別試写会では、監督や遺族、観客が作品を鑑賞。
「尖閣」という現在の政治問題だけを見るのではなく、1945年にそこで何が起きたのか。
そして、戦争によって犠牲になった人々がどのような状況で生きようとしていたのか。
まずは、その視点から映画を観て、その上で政治的な面はそれぞれ、観た人が判断すべきだろう。上映前からしかも原作すら読むことなく批判している方も一部でいるようだが、それは少し違うのではないかと思う。
なお、石垣市は2027年の全国公開予定と案内しています。公式サイトでは沖縄県先行ロードショーの案内も出ているため、今後の正式な上映日程に注目したいところです。
