沖縄県石垣市の中山義隆市長は10月29日、外務省、厚生労働省、環境省の各省庁を訪れ、尖閣諸島への行政標柱の設置や魚釣島における戦没者の遺骨収集、自然環境保全に向けた上陸調査を相次いで要請した。
それぞれの省庁に対する要請内容は以下の通りである。
- 厚生労働省(浦野靖人副大臣):戦没者の遺骨収集1945年、石垣島から台湾へ向かう疎開船が米軍の攻撃を受け、魚釣島へ漂着した「尖閣列島戦時遭難事件」に由来する。現地には今なお遺骨が残されているとし、現地調査と遺骨収集の実施を求めた。
- 環境省(石原正敬政務官):生態系保全のための上陸調査魚釣島では野生化したヤギによる植生荒廃や表土流出、海洋漂着ごみの堆積が深刻化している。生態系保全策を具体的に検討するため、専門家等による上陸調査が必要であると主張した。
- 外務省(堀井巌副大臣):行政標柱の設置許可1969年に設置された行政標柱の老朽化に伴い、再設置を目的とした上陸許可を求めた。
これらの要請はいずれも過去に提出されているが、これまで実現には至っておらず、今回の再要請となった。正式な形での標柱設置要請は2021年にも行われたが、政府によって認められなかった経過がある。
その後、中山市長は2022年1月に東海大学の調査船に同乗し、海上からの視察を実施した。行政機関による尖閣周辺海域の調査としては、2012年9月に東京都が実施して以来、約10年ぶりの出来事であった。
なお、再設置を目指している行政標柱自体はすでに完成している。現在は石垣島のユーグレナ石垣港離島ターミナル2階にある「石垣市尖閣諸島情報発信センター」にて一般展示されている。

筆者撮影
尖閣上陸の歴史と現在の停滞
過去の尖閣諸島への上陸例を振り返ると、2012年に集中している。
- 2012年:石垣市議2名が北小島に上陸。
- 同年8月19日:チャンネル桜の水島総氏を中心とする地方議員や一般人ら10名が魚釣島に上陸。
- 同年9月18日:鹿児島県の地域政党「薩摩志士の会」メンバーら2名(うち1名は幸福実現党所属の歌手・TOKMA氏)が漁船をチャーターして上陸。
これらはいずれも政府の許可を得ない形での上陸であった。そして、これ以降、尖閣諸島への新たな上陸報道は途絶えている。
常態化する領海侵入と政府の「弱腰」姿勢
尖閣諸島周辺海域では、中国海警局など中国公船による領海侵入や接続水域での航行が完全に常態化している。海上保安庁が公開している動向グラフを見ても、その活動の活発化と深刻さは明らかである。
このような緊張感の高まりを背景に、日本政府は一貫して自治体行政による尖閣上陸を認めない方針を崩していない。今回出された石垣市の再要請についても、許可が下りる公算は極めて低いのが現状だ。
外交や安全保障において強い姿勢をアピールする政権下であっても、こと尖閣諸島の実効支配強化や行政活動に関しては、従来の自民党政府が取ってきた事態エスカレーション回避を優先する「弱腰」の方針が引き継がれていると言わざるを得ない。

(出典:海上保安庁「尖閣諸島周辺海域における中国公船等の動向と我が国の対処」)
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