11月6日、首相官邸で沖縄政策協議会が開かれました。開催は2013年以来、13年ぶりです。一夜明け、会議の詳細や関係閣僚の発言が報じられています。
この記事では、琉球新報の報道をもとに内容を整理し、県が政府に提出した要請書の全文も掲載します。
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沖縄政策協議会が13年ぶり再開、高市首相も出席 古謝知事が普天間返還期日の明確化など要請
沖縄政策協議会とは
沖縄政策協議会は、沖縄振興や米軍基地の負担軽減などについて、政府と沖縄県が話し合う場です。今回は木原稔官房長官が主宰し、高市早苗首相、古謝玄太知事、全閣僚が出席しました。
会議の概要:約15分、28項目を要請
報道によると、会議の所要時間は約15分でした。県は沖縄振興や基地負担軽減など4分野28項目の要請書を提出しています。
古謝知事は、27年度の沖縄関係予算の確保、税制改正、長期的な振興策への支援、基地負担軽減などを求めました。米軍普天間飛行場の返還期日の明確化も要請に含まれています。知事は「政府全体の最優先課題として位置付け、取り組みを進めていただきたい」と述べました。
高市首相は冒頭、沖縄振興を国家戦略として総合的・戦略的に進めることが重要だと強調しました。県の要請については、次年度に対応できる事項と中長期で取り組む課題に分けて、各省庁で検討するよう指示しています。基地負担軽減では「目に見える形で実現できるよう力を尽くす」と述べ、米海兵隊員が起訴された強盗殺人事件にも触れて、再発防止に取り組む考えを示しました。
県要請書のポイント
要請書は総額を具体的に示さず、31年度までの沖縄振興計画期間内に必要な予算の確保を求めています。
注目されるのが揮発油税の軽減措置です。県は措置の延長に加え、根拠法を現行の沖縄復帰特別措置法から沖縄振興特別措置法へ、早期に切り替えるよう求めました。
基地負担軽減の分野では、次の3点が柱です。
- 普天間飛行場の返還期日の明確化
- 米軍人による事件の再発防止
- 日米地位協定の抜本的な見直し
回答は持ち越し、「報告会」との声も
琉球新報は、実質的な議論や国側からの回答は次回以降に持ち越されたと伝えています。会合で進展があった項目はなかったとされ、内閣府関係者からは「協議というより報告会」との冷ややかな見方も出たそうです。
要請内容には、県民所得倍増への支援や普天間返還期日の明確化など、知事の選挙公約に沿った項目が含まれました。一方で、従来の県政が求めてきた項目も多く、「総花的」「核がない」との指摘も支援者から出ています。これに対し県関係者は「花火を打ち上げたわけではない」と述べ、首相らが出席する場で要請し、首相が「丁寧に検討」を指示したことは「言質をとる意味が大きい」と強調しました。
予算・税制の見通し
政府が早期に対応するとみられるのは、沖縄関係予算と税制措置です。ただ、予算関連の要請項目には、すでに概算要求に盛り込まれていたものも多いとされます。「所得倍増に向けた支援」など独自の要望が年末の予算編成でどこまで具体化するかは未知数です。
揮発油税の根拠法切り替え
揮発油税の軽減措置は、本土復帰に伴う「激変緩和」を目的としており、中央政界から「いつまで続けるのか」との批判がありました。県は根拠を沖縄振興特別措置法に移し、輸送コスト高など離島県の不利性に基づく制度とすることで、継続の見通しを立てやすくする狙いです。
県は当初、27年度は復帰特措法で延長し、切り替えはその次と見込んでいました。古謝知事の選挙公約も「復帰特措法での延長」でしたが、経済界の要望などを踏まえて前倒ししたといいます。内閣府関係者は制度上可能とみており、焦点は年末の与党税制改正大綱に盛り込まれるかどうかです。ただ、議論の時間は限られており、県幹部は「今後の議論につながる担保のようなものがとれるといい」と話しています。
基地関連は米側との調整が必要
普天間飛行場の返還期日や日米地位協定の見直しは、米側との調整が必要です。自民党関係者は「相手があることだから、ここで議論できるわけない」と語っており、実現には不透明感が漂います。
関係閣僚の発言
6日の閣議後会見などで、関係閣僚は次のように述べました。
- 木原稔官房長官:基地負担軽減を「政府の最重要課題の一つ」と位置づけ、目に見える形での実現に全力を尽くすと強調。協議会の主宰者として知事の要請を受け止め、一つ一つ着実に結果を出すとしました。
- 葉梨康弘沖縄担当相:基地跡地利用を含む沖縄振興策を、国家戦略として総合的・積極的に推進する観点から検討する考えを示しました。協議会の年内再開催については「現時点では未定」としています。
- 小泉進次郎防衛相:要請について、どのような対応が可能か速やかに検討すると述べました。普天間の返還期日の明示を問われると、協議会での発言の詳細は葉梨氏と木原氏の説明に委ね、明言しませんでした。
- 茂木敏充外相:県民の基地負担を重く受け止めており、外務省としても負担軽減に全力を尽くすと、協議会で発言したことを明らかにしました。
与党調査会でも報告
古謝知事は同日午後、自民党の沖縄振興調査会・美ら島議員連盟の合同会議にも出席し、協議会での要請内容を報告しました。調査会長の小渕優子氏は終了後、「できるだけご要望に応えられるように、みんなで汗をかこうという話になった」と述べています。
【全文】沖縄振興及び基地負担の軽減に関する要請
6日の沖縄政策協議会で古謝玄太知事が政府に提出した要請書の全文は次のとおりです。
沖縄振興及び基地問題の解決のため、平素から格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。本県はこれまで、沖縄振興予算等を最大限に活用しながら、県民が豊かさを実感できる社会の実現に向けて各種施策を積極的に推進してまいりました。
本県が有する地理的特性や歴史的・文化的特性、海洋島しょ性等の地域特性を十分に生かし、発展可能性を引き出すことは、本県の振興・発展にとどまらず、我が国全体の発展につながるものと考えます。一方で、本県は、国土面積のわずか0.6%に過ぎませんが、在日米軍専用施設面積の約70.3%に及ぶ広大な米軍基地の存在により、航空機事故や日常的に発生する航空機騒音、自然環境の破壊のほか米軍人等による事件・事故などが、周辺住民をはじめ、県民の生活に様々な影響を及ぼしています。
つきましては、沖縄振興策の更なる拡充と基地負担の軽減が必要であることから、県民の強い思いを受けた私が強い決意で取り組む所存である下記の事項について要請いたしますので、特段の御高配を賜りますようお願い申し上げます。
1 令和9年度予算に関する要請
強い沖縄経済の実現に向けた施策を総合的かつ安定的に推進するため、令和9年度予算を含めた、沖縄振興計画期間内(令和13年度まで)の沖縄振興予算及び関連する予算の所要額確保
- 強い沖縄経済を実現するため、稼ぐ力の向上や新5K経済(観光・健康・環境・海洋・起業)振興等を推進するとともに、国土強靭化を実現するための支援(ソフト交付金、ハード交付金等の所要額確保)
- 沖縄全体の発展に資するGW2050 PROJECTSの早期実現に向けた積極的な支援
- 地域未来戦略に基づく医療・バイオ産業クラスター形成に向けた取組に対する支援及びクラスター形成のため必要となるインフラ整備への支援
- 子育て支援対策、こどもの貧困対策への支援
- 鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入に向けた支援
- 市町村が実施する地域課題の解決に向けた取組に対する支援(沖縄振興特定事業推進費、沖縄離島活性化推進事業費及び北部振興事業費の所要額確保)
- 離島に住み続けるためのコスト低減への支援
- 離島航空路の機材の更新に要する支援
2 令和9年度税制に関する要請
- 税制改正の着実な実現
- 特に、揮発油税等の軽減措置の確実な延長。延長にあたっては、できる限り早期に沖縄振興特別措置法を根拠として同様の措置を講ずること。
3 沖縄の長期的発展の視野にたった要請
- 県民所得倍増に向けた支援
- 沖縄における国立自然史博物館設立
- 鉄軌道を含む南北縦断の公共交通機関の早期事業化
- 世界のゲートウェイとなりうる那覇空港等の機能拡張
- アジアと日本の結節点としての沖縄振興
- 海洋資源調査に関する国機関の設置
- 定住に向けた基盤整備等の離島振興
- 離島航路の船舶の更新に要する支援
4 基地負担軽減要請
- 普天間飛行場の一日も早い危険性の除去及び早期返還に向けた期日の明確化並びに普天間飛行場負担軽減推進会議の早期開催
- 嘉手納飛行場より南の施設・区域の着実な返還と返還期日の明確化及び在沖海兵隊や航空機訓練の国外移転等の着実な実施
- 施設・区域の県民生活の利便性向上のための共同使用の推進
- 米軍人等による事件の再発防止等
- 日米地位協定の抜本的な見直し
- 嘉手納飛行場におけるパラシュート降下訓練の禁止及び旧海軍駐機場の使用禁止
- 米軍基地周辺で検出されているPFOS等問題及び米軍の活動に起因するその他環境問題の解決
- 嘉手納飛行場、普天間飛行場等における航空機騒音の軽減、航空機事故の再発防止等
- 訓練水域・空域の削減等
- 普天間飛行場代替施設の建設に伴う影響に関する地元住民の要望に対する適切な対応
今後の焦点
- 年末の予算編成で、県の要請がどこまで反映されるか
- 与党の税制改正大綱に、揮発油税の軽減措置の延長と沖縄振興特別措置法への根拠法切り替えが盛り込まれるか
- 協議会が年内に再び開かれるか(葉梨沖縄担当相は「現時点では未定」)
- 普天間返還期日の明確化や地位協定の見直しなど、米側との調整が必要な基地関連項目が動くか
13年ぶりの再開という節目ですが、今回は要請の提出が中心で、具体的な回答は次回以降となりました。今後の展開は続報でお伝えします。
参考:琉球新報「『普天間返還日明確化を』知事、基地や振興政府要望 13年ぶり沖縄政策協」、同「13年ぶり沖縄政策協 基地負担減、回答持ち越し」、同「沖縄振興策検討へ 関係閣僚が知事要請受け」、同「県要請書全文」
