2018年から2期8年にわたり沖縄県政を担ってきた玉城デニー知事が、2026年9月29日、任期満了に伴い退任する。9月13日の県知事選挙で当選した古謝玄太新知事が、30日から就任する。
玉城氏は、翁長雄志元知事の遺志を引き継ぎ、「オール沖縄」の中心的存在として、辺野古の埋め立てに一貫して反対してきた。政府には一貫して「対話」を求め続けた。また、「誰一人取り残さない、優しい社会の実現」を掲げ、福祉など弱い立場の人に寄り添う施策を中心に進めてきた。
在任中は、新型コロナ、首里城火災、豪雨災害、豚熱、鳥インフルエンザ、軽石の漂着など、さまざまな出来事への対応に追われた。県民の間で賛否が分かれた対応も少なくない。ここでは、玉城県政8年間の主な出来事を振り返る。
玉城県政8年間の主な出来事
2018年
- 10月4日:9月30日の県知事選挙で当選し、復帰後8代目の公選知事に就任。
2019年
- 2月24日:辺野古米軍基地建設のための埋め立てについて、県民投票が実施された。結果は、反対43万4,273票(71.7%)、賛成11万4,933票(19.0%)、どちらでもない5万2,773票(8.7%)、投票率52.48%。反対派の主導で提案された経緯から、一部の市町村は実施に慎重な姿勢を示し、選択肢を増やすべきだとの意見も出た。保守派の一部にはボイコットの動きもあった。反対派はこの結果を県民の民意だと主張したが、法的拘束力はなく、埋め立て工事は現在も続いている。
- 10月31日:首里城で火災が発生。公式調査では、原因は特定できず不明とされた。首里城は国の所有だが、この年の2月に管理権限が国から県へ移管されていたことから、県の管理責任が問われた。首里城は2026年11月に再建が完了し、22日に完成式が予定されている。
2020年
- 1月8日:沖縄で34年ぶりに豚熱が発生。本島中部の7例10農場に感染が広がり、1万2,381頭が殺処分の対象となった。県は豚熱ワクチンの導入を国に申請し、2月に農林水産省が承認、3月から接種が始まった。ただし、ワクチン接種を実施している地域は国際機関から豚熱の発生国と認定され、海外輸出が禁止された。輸出量は多くなかったものの、輸出禁止について十分な議論がないままワクチン導入に踏み切ったことへの批判が一部にあり、経済的な影響は現在も続いている。また、導入当初は接種を担う人手の不足が課題となっていたが、国の方針変更で接種できる人の範囲が広がり、接種体制は整いつつある。
- 2月14日:県内で初めて新型コロナの感染者を確認。全国でも早い時期だったため、全国的に注目された。その後、感染は全国に拡大し、県内の観光業や飲食業は大きな打撃を受けた。玉城知事が先頭に立ち、県は積極的な対策を講じた。
- 県独自の基準と警戒レベルを設定
- 政府に先んじた県独自の緊急事態宣言
- 空港などでの検温、無償のPCR検査・抗原検査の実施
- 流行初期に、バー、キャバレー、カラオケボックス、学習塾、一部商業施設など幅広い業種へ休業を要請
- 飲食店や接待を伴う遊興施設への時短営業(20時・21時まで)や、酒類提供の自粛・時間制限の頻繁な要請
- 休業要請に応じた事業者への協力金の支給
- 休業要請の対象外でも売上が大きく減った飲食店・小売業者への支援金の支給
- 売上が減少した中小企業への実質無利子・無担保の融資
- 3月26日:那覇空港の第2滑走路が供用開始。仲井眞県政の時代に国土交通省が増設の方針を固め、約5年10か月の工事を経て完成した。
2021年
- 7月26日:「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録された(やんばるの森、西表島など)。
- 10月ごろ:8月に小笠原諸島の海底火山が噴火した影響で、大量の軽石が大東島に漂着し、その後、沖縄本島にも押し寄せた。船舶のエンジン故障のおそれから漁業に大きな影響が出たほか、砂浜への漂着で観光業にも影響が及んだ。回収・撤去には多大な時間と労力を要した。
2022年
- 1月27日:沖縄市で警察官と高校生が接触し、高校生が右目を失明した事件をきっかけに、SNS上の情報を信じた若者ら約300〜400人が沖縄署に押しかけ、騒動となった。
- 5月15日:沖縄の本土復帰から50年の節目を迎え、沖縄と東京の2会場で政府・県共催の記念式典が開かれた。
- 9月30日:9月11日の県知事選挙で再選され、2期目がスタート。
- 12月:金武町の養鶏場で、県内初の高病原性鳥インフルエンザが発生。採卵鶏約4万5,000羽の殺処分や周辺の移動制限などの防疫措置が取られ、他農場への拡大はなく、速やかに収束した。
2023年
- 7月末〜8月:台風6号が県内全域に長期間の暴風と大雨をもたらし、死者1人、重傷者7人、軽傷者96人の甚大な被害が出た。
2024年
- 2月29日:辺野古の埋め立て地の用途変更などの承認をめぐる代執行訴訟で、県の上告を最高裁が受理せず、県の敗訴が確定した(国土交通大臣が、設計変更申請を承認するよう知事に命じることを求めた訴訟)。
- 11月:本島北部で豪雨が発生し、4村1市で少なくとも床上浸水52件、床下浸水55件の被害が出た。雨のピークは11月8〜10日だったが、県が災害対策本部を設置し、国(内閣府)に災害救助法の適用を打診したのは、雨がやんだ後の11月11日だった。この遅れにより、同法は適用されなかった。のちに、国側が9日午前の時点で県に電話で打診していたものの、県の担当課につながらなかったことも明らかになった。県への批判が相次ぎ、玉城知事は記者会見で「初動の判断が遅れた」と述べ、「猛省する」と陳謝した。同法が使えなくなったことを受け、市町村や被災者に過度な負担がかからないよう、県は独自に約1億4,000万円の予備費を支出した。
2025年
- 1月16日:設計変更不承認処分の取り消し訴訟などに関する最後の抗告訴訟で、県の上告を最高裁が受理せず、県の敗訴が確定した(県が防衛省の設計変更申請を不承認としたことをめぐる一連の訴訟のうち、最後に残っていたもの)。
- 6月28日:名護市安和の安和桟橋で、辺野古反対派の抗議活動中に、抗議する女性を制止しようとした警備員1人が死亡した。県議会は、桟橋の出入り口付近にガードレールを設置するなどの安全対策を知事に求めたが、県は応じなかった。当時の事故の映像を見ることも拒否し、一部から批判が上がった。
- 7月25日:本島北部に大型テーマパーク「ジャングリア」がオープン。
- 8月23日:夏の甲子園で沖縄尚学高校が優勝し、沖縄県勢として夏の大会初優勝を果たした。
2026年
- 2月8日:第51回衆議院議員選挙で、オール沖縄の候補が全選挙区で敗れた。
- 3月16日:辺野古で、修学旅行生を乗せた抗議船2隻が転覆し、船長と高校生の計2人が死亡した。
- 9月29日:沖縄県知事を退任。
玉城知事の主な実績
- 中学卒業までの子ども医療費の窓口無償化、中学生を対象とした給食費の半額補助
- 福祉や多様性を軸とした施策の推進
- コロナ禍を乗り越え、観光収入が1兆円規模へ回復
- 2026年度の県予算は過去最高の9,468億円。2024年度の県税収入も決算ベースで過去最高の1,997億円
筆者の所感
私自身は、このブログで玉城県政の多くについて批判的な意見を述べてきた。対応が後手に回ることが多く、知事としての判断も曖昧に映る場面が多かったからだ。
実績として挙げられる医療費の無償化や給食費の半額補助、観光客の回復、税収の増加は、選挙戦でも訴えられていた。しかし、前の二つは日本社会全体の潮流であり、知事が新たな政策を生み出したという印象は薄い。観光客や税収の増加も、県や知事の力というより、日本全体の動きの中で起きたことだ。税収については、国全体ほど沖縄県は伸びていないという指摘もある。
辺野古の問題では、政府との裁判にすべて敗訴し、打つ手を見いだせないまま、県内外で「対話」を口頭で訴えるにとどまったのが実情だろう。県民生活や経済が向上したと言えるような、大きな成果があったとは言いがたい。
退任の日に厳しい意見となってしまうが、「誰一人取り残さない」という言葉とは裏腹に、辺野古や基地に反対する人々に重きを置いた県政だったのではないだろうか。
